妻中便り

高校2年生 歴史文化研究旅行 その3

旅行三日目。今日も快晴。
長袖ではいられないくらいの陽気の中、今日は奈良から京都に移動しながら、
それぞれの古都の代表的なスポットをクラス単位で回る1日です。
 
毎朝生徒たちは寝坊することなく朝食会場に姿を見せていますが、
中には我々教員と同じくらい早くに朝食会場にやってくる生徒もいます。
まだ集合時間前だよ、早起きしたなら部屋でゆっくり過ごせばいいのに、と声をかけると、
返ってくる答えは、「だってお腹が空いたから」。
修学旅行において我々の一番の心配は、言うまでもなく生徒の健康面です。
きちんと睡眠時間をとること、三食しっかり食べること(食欲があること)。
まずはこれさえクリアできていれば我々としても安心です。
生徒の何気ない「お腹空いたー」が我々にとってはとても嬉しい言葉です。
 
朝食後、宿を移動するため、生徒たちはスーツケースなどをトラックに預け、
カードキーを返却して、バスに乗り込みます。
高校2年生ともなるとこうした流れもとてもスムーズで、
詳細な指示を与えなくても自分たちで考えて動くのできちんと全体が回ります。
教員が動く前に学級委員が動いたり、旅行係が自発的に行動したり。
こうした細々とした部分にこそ生徒たちの成長がよく見て取れます。
 
名残惜しい気持ちとともに宿を出発し、まず向かうは東大寺です。
春日大社でバスを降りて、そこから各クラスが二班に分割され、
それぞれの班に一人ずつガイドさんが付きました。
この地をガイドすることを生業とするまさにプロのガイドさんの説明は、
この分割によってさらに細やかに生徒に伝わります。
 
 
緑に囲まれた順路はアップダウンに富み、そこそこ体にこたえる運動ですが、
今日のような青空の下では生徒の足取りも軽く、素敵なハイキングとなります。
 
 
また、この旅行後、学年では京都・奈良をテーマにしたフォトコンテストが開催されます。
参加は任意ですが、入選を目指す生徒たちのカメラを握る手にも力が入っています。
 
 
二月堂、三月堂を見学した後、大仏殿へ。
大仏殿は全てにおいてスケールが大きく、
老若男女に加え国際色も豊かな観光客でまさにごった返していました。
はぐれないように必死でガイドさんの後を追いながらも、
生徒たちは見たり撮ったり聴いたり、充実した時間を過ごしました。
 
 
 
その後、興福寺国宝館にて、つい最近英語の教科書に登場した阿修羅立像を見学し、
昼食会場である天平倶楽部へと向かいます。
 
 
 
古代米や柿の葉寿司を含む「らしさ」が詰まった食事を堪能し、
この後はいよいよ京都に入ります。
 
京都における最初のポイントは平等院鳳凰堂。
集合写真では手に十円玉を持つ生徒もいて、
毎度のことながら写真撮影時の生徒のアイディアの豊かさに驚かされました。
 
 
続いて伏見稲荷。有名な千本鳥居をくぐりながら生徒は元気に闊歩します。
 
 
その後一行は京都の宿舎に入りました。
今日から二泊三日はこの宿を借り切る形で過ごします。
夕食前に宿の女将さんから御挨拶を頂きましたが、
本物の京言葉に生徒たちからは思わず歓声が上がりました。
 
 
今日の夕食はすき焼き。
これまでの校外学習ではあまり見たことのない種類の食事に、
生徒たちは驚きと興奮を隠しきれません。
 
 
食べきれないほどの量の牛肉がテーブルに並び、
「とても食べきれない」と悲鳴をあげながらも結局完食してしまうグループもちらほら。
 
 
食後は明日の自主研修に向け、改めて作戦会議を開く生徒たちもいれば、
ゆっくり体を休める生徒、この夜をひたすら楽しむ生徒もいて、
思い思いの過ごし方で京都での最初の夜を満喫していました。
 
この日は朝から目まぐるしく移動し、
京都・奈良の「マスト・スポット」を次々に踏破する一日でした。
それゆえに今日の行程もまた盛り沢山で、正直言って生徒たちも現時点では、
この日見て触れたものたちのことを頭の中で整理しきれていないのではないかと思います。
ただそれでも、きっともう少しだけ時間が経てば、
生徒たちはこの日訪れた場所のことをたびたび思い出すことになるでしょう。
それだけの重みがこれらの場所にはあり、それがいわゆる「歴史の重み」だからです。
そしてまたいずれ、この日これらの場所を訪れたことの価値にも気付くことでしょう。
 
今回の旅行全体の中で言えば、今日は歴史的なスポットに数多く触れることで、
京都・奈良の歴史と文化に、
あるいは「歴史と文化」というもの自体に無意識的に体を順応させるためのものでした。
この日は明日の自主研修をより実り多きものにするための伏線でもあったのです。
 
さて、明日の自主研修ではその伏線がどう生きてくるでしょうか。
 
To be continued…
一覧へ戻る