妻中便り

東京外国語大学・鈴木義一先生の講演会-「ウクライナ問題」を考えました

2月21日(土)、「ウクライナ問題」をテーマに、ロシア語、東欧地域研究がご専門の東京外国語大学・国際社会学部教授・鈴木 義一(すずき・よしかず)先生をお迎えしての講演会が本校・カフェテリア(アゴラ)にて開催されました。

 

この講演は、本校の保護者組織である父母後援会の主催によるセミナーの一環です。今回は、まさに今、世界中の目が注がれている「ウクライナ問題」がテーマです。

 

”Ukraine Crisis”はまさに、連日の世界の主要メディアのヘッドラインです。しかし、これだけの大きなグローバル・イシューであるウクライナ問題ですが、日本国内では、どれだけその背景や本質が伝わっているのでしょうか?鈴木先生は、「ウクライナ問題の歴史的、構造的な背景」を丁寧にわかりやすく解説されました。この問題がいかに深く歴史に根差したものであるかを改めて考えさせられました。16世紀までさかのぼって考える必要があるクリミア問題。そして、この問題でも、20世紀の第2次世界大戦での様々な出来事、特にホロコーストの負の影が大きく影響していること。こうしたことを十分に認識しないと、"Ukraine Crisis"を考えることはできません。

 

奇しくも2014年2月22日に現在のウクライナ危機の転換点となった政変から、ちょうど1周年。「ロシアはウクライナの言語と文化を否定し、武力で併合・支配してきた。」と考えるウクライナの西部地域の人。「ウクライナ・ナショナリストは第2次世界大戦のナチス占領とホロコーストへの協力者である」と考える南部・東部地域の人。鈴木先生のお話から、歴史を踏まえて、それぞれの立場に思いを巡らせることができました。

 

人は皆、自分の「正義」があること。その「正義」が争いを引き起こし、人を傷つけること。その「正義」は深い歴史がその後ろに積み重なっていること。人は皆、自分の「正義」の相対性に気が付かなければ、さらに人を傷つけてしまうこと。ウクライナ問題は、まさに中東で起こっていることを始めとした世界中の地域紛争と重なります。多文化共生のためには、こうした正確でクールで、現実的かつメタフィジカルな歴史認識と自己認識がなければならないことを強く学ぶ講演となりました。

 

講演の後半は、こうした世界の歴史・地域研究の持つ大切な意味、そのために地域言語を深く学び習得することの持つ重要な意味を踏まえ、東京外国語大学での取り組みをご紹介いただきました。この会には、保護者だけではなく、本校の高校生も参加。彼女たちにとっては、表層的な「グローバル」の掛け声に惑わされず、大学での学問の持つ深い意味を考える鈴木先生の講演になったと思います。

 

本校は、鈴木先生が講演でお話しされた「英語はデファクト。世界のさまざまな多言語を1つ、深く学び、修得することが必要です。」に深く共鳴します。英語以外にフランス語を教育課程に入れ、日仏の交流に積極的に取り組んでいるのは、こうした「多言語への意識」が非常に大切と考えているからです。

 

この講演は、参加した本校の高校生のこんな質問でwrap upしました。「先生、東京外国語大学では、ベンガル語はどのような位置づけでしょうか? 私はバングラディシュでの活動に興味があります。」― 本校の目指すグローバル教育とは、世界のさまざまな地域へ、目を向ける、そして、今起こっている問題の本質へ迫るクリティカルな意識を持つことを目指しています。

 

 
一覧へ戻る