妻中便り

知る は幸せのタネ(合唱部 ハンセン病問題シンポジウム出演)

インフルエンザが猛威を振るっているとのニュースにおびえる冬。

学級閉鎖や学年閉鎖のような事態にこそ陥っていないものの、少しでも熱っぽかったり、

寒気がしたりすれば、「もしかして…」と疑ってしまうのは当たり前です。

「やだ~。インフルじゃないの?マスクして!近づかないで!」

「コッチ来ちゃダメ!絶対インフルだから早く帰って!」

不調を口にするやいなや、防御モードに入る生徒たち。

口調は厳しいですが、ご安心ください、表情は心配そうにしつつ、笑顔です。

 

どうして笑顔でいられるか。

インフルエンザは感染こそするものの、治る病気だし、症状も一過性のものだ、とみんなが

しっかり分かっているから。予防をして、それでも感染したら、病院で処置してもらえば

大丈夫だと知っているから。

 

知らない、というのは恐ろしいことです。

もし、感染力が低い病気なのに、感染する、と思い込んで怖がってしまったり、病気に

かかった人を疎外したり差別したりしてしまったりすれば、病気に苦しむ人は、別の

苦しみも同時に背負うことになってしまいます。

 

「ハンセン病」という病気があることを、今の子どもたちは教わる機会がない限り

知りません。それほど、現在の日本では発症する人が少ない病気です。

しかし、時代をほんの少しさかのぼれば、病名を聞くだけでひどい差別を受けて

病気以上の苦しみを経験した人のエピソードは、それこそ数限りなくある…という

現実と私たちは直面します。

 

2月3日(土)、渋谷区文化総合センターにて開催された人権フォーラム。

「ハンセン病問題に関するシンポジウム」に、合唱部も参加し、オープニングで手話曲

『にじいろ』を披露しました。

~手をつなげば温かいこと  嫌いになれば一人になってくこと

 ひとつひとつがあなたになる 道は続くよ~(『にじいろ』歌詞より)

 

一人で生きることなんて、絶対に出来ません。

だから、手をつなぐために、自分から知るべきこと、確かめるべきこと、考えてみるべき

ことが私たちにはたくさんあります。ハンセン病問題もその一つ。

何も知らないのに、何も考えていないのに、ただ目の前にある事実だけを観ておびえたり、

遠ざけたりするなんて、絶対に許されないことです。

 

実際お話を聴いたり劇を観たりした合唱部員たちからの声を以下にご紹介します。

 

「病気に対する偏見・差別があった、ということ以上に、そういう病気が存在することさえ

私は知りませんでした。でも、AIDSやその他の病気と同じように、今現在差別や偏見で

苦しむ人たちがいる、ということを、まず知るべきだ、と感じます。」

 

「劇を観ながら、随分古い時代のことなのかと思っていたら、自分たちが生まれた2001年、

ようやく裁判で勝訴した、ということを知って驚きました。今、まさに自分たちが暮らしている

現実社会の出来事なのか、という驚きはもちろんですが、昔、と感じる時期から現在まで

長く長く苦しまなければいけなかった人たちがいる、ということにも衝撃を受けました。」

 

「私たちが今すぐに出来ることは少ないかもしれません。でも、知らなければ考えることさえ

出来ない問題がある、と認識し、たくさんのことを知ろうとする姿勢が大切だと思います。

そして、身近な人はもちろん、まわりにいる人たちの存在を、かけがえのない大切なものだと

思うことから、差別や偏見を防ぐことが出来るかもしれない、と思いました。」

 

知ることで良くしていける未来がある。考えることで幸せに出来る人がいる。

歌をきっかけに、これまで知り得なかった新たな事実と出会う、貴重な一日になりました。

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