妻中便り

高2歴史研究旅行見聞録⑤

鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿!
ホテルを出たバスが春日大社付近に近づいてから東大寺を出るまで、
何度この単語が連発されたことでしょう。
想像以上に大きい雄ジカがゆっくり寄ってくるのに驚いてみたり、まだ
小さいシカがキュッと引き締まった顔を寄せてくるのに頬ずりしてみたり…。

シカの多さにもビックリしますが、それ以上に観光客の多いこと!
お友だちとちっちゃな手をつなぎあってお寺をめぐる幼稚園児から、
お互いを気遣いながら急な階段をゆっくりゆっくり、踏みしめるように
のぼる年配の方まで。初夏の陽射しがまばゆく反射する先には、豊かな
ブロンドヘアもあれば、意匠を凝らした民族の衣装・サリーもあり…。
洋の東西、老若男女を問わず、驚くほど人々が、この地に何かを求めて
訪れているのです。

一体何を求めて?何のために?
答えは絶対にひとつではありません。
「東大寺はな、2回焼けとります。1度は(中略)焼いてしまえ〜!ゆうて
火いつけはったんです。」観光ガイドさんがこう説明なさった途端、
「ええっ?何で?」
「焼くことないのに…もったいない!」
自然と出てきた素直な所感。
残さないことは、良くない。この発想がスッと出てくる事実。
なぜ残すべきなのか。前進だけ、進化だけではダメなのか。
喪われることへの本能的とも言える拒否反応に、答えの一部が隠されて
いるのかもしれません。

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