妻中便り

9/7(土)_國枝孝弘先生の講演(保護者セミナー)

慶應義塾大学総合政策学部教授、國枝孝弘先生(フランス・トゥールーズ大学文学博士、フランス語教育、フランス文学がご専門)の講演が、9月7日(土)に本校・カフェテリア(アゴラ)にて開催されました。

 

この講演は、本校の保護者組織である父母後援会が主催するもので、毎年2回、保護者の方を対象に行っている講演会の一環です。今回は、フランス語教育で著名な國枝先生をお迎えして、「フランスの言葉、文化、生活 - フランス語を例に、外国語を学ぶ意義について考える」と題しての講演。 本校は、フランス語Ⅰ、フランス語Ⅱを正規の選択履修科目(高校)としていますので、國枝先生のご提案もあり、今回は特に、保護者だけでなく、本校でフランス語を選択して学んでいる高校生も一緒にお話を伺うという、今までにないハイブリッドな講演になりました。

 

NHKテレビ、ラジオのフランス語講座の講師としてもおなじみの國枝先生のお話。ラジオ講座での優しく丁寧で気さくな語り口そのままに、フランス料理や宗教から、社会全般、そしてフランス共和国憲法の話へと進んでいきます。 「僕と目が合っちゃった君、答えてね!」といった先生とのやり取り。 先生が醸し出すやわらかく、心地よい空気が会場に流れつつも、いつの間にか、言語の本質へ迫っていることに皆、「はっ」としました。

 

「グローバル教育=英語をツールとして使いこなす人材育成」という考えだけでいいのでしょうか? 「言語って、ただ私の利益のために、ビジネスパートナーに必要なことを伝達するためだけの道具なのだろうか?」 多言語理解という視点に皆が少しずつ気づいていきます。外国語教育=英語教育という視点だけでは見えてこなかった言語の本質的役割に、特に若い高校生は敏感に反応していました。 それは「交流」であり、「他者理解」であり、その言葉の向かう相手が「ビジネス上の役割としての相手」から、「固有の名前を持った無二の存在」であることへの気づきです。

 

英語が世界共通語として、あまりにも肯定的に強調されすぎてはいませんか。 もちろん英語を学ぶことは大切なことです。しかし、英語が否応なしに世界を覆う言語であればあるほど、他の様々な言語を学ぶことが、その言語が(英語と比べれば)マイノリティであるがゆえに、他者への共感的理解へ帰結していくことになると。こうした視点に、参加した保護者の方も、生徒の皆さんも一緒に気づくことができたことが、何よりも素晴らしい体験でした。

 

もちろん、國枝先生は、たくさんのフランス語教本をお書きになっている言語教育のエキスパート。 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで、実践されている外国語教育法も紹介され、プラグマティックな言語習得法、勉強方法もしっかり学びました。これで、皆さんは、フランス語も英語もばっちり力を伸ばすことがきますね。

 

このレポートの最後に、この講演に参加した生徒の感想を記します。彼女の言葉で、この國枝先生の講演レポートを締めくくることができるのは、フランス語を教えている大妻中野としてとても幸せなことだと思っています。

 

「今回、國枝先生のお話を伺って、言語に対する見方、考え方を改めなければいけないなと思いました。 フランス語を学び始めたのは、特に理由もなく、なんとなくで始めてしまっていて、特に多言語について考えたこともなかった私でしたが、先生のお話から、「マイノリティであることを実感すること」、「他者理解」などの言葉を伺って、フランス語を学ぶ意義を感じることができました。「コミュニケーション」を「伝達」ではなく「交流」と考えるということを大切にして、これからもフランス語を学んでいきたいと思います。 …英語も頑張ります (^.^)」

 

P.S. 10月下旬から3週間、フランス各地の高校生4名が交換留学生として本校の生徒家庭にホームステイ。本校で一緒に勉強します。國枝先生のお話で、彼女たちとの交流がますます実り多いものになるでしょう!

 

 

 

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